良い硯の条件

①よく磨れること
②筆を傷めない
③安定感があり、ぐらつかない

④硬さが適当で、摩滅しない
⑤色艶がよい

硯を選ぶ3つのポイント

①使いやすさ
②耐久性
③機能性


特色や良否もありますが、現在生産されている硯の中では、やはり端渓硯がもっともすぐれているのではないかと思います。

実用硯としてお使いになるのであれば、長方形の硯を選ぶのが無難です。

しかし、好みによっては、楕円形や天然形につくられたものを実用硯に選ぶのもおもしろいかもしれません。
実用硯もできれば用途によって使い分けられるよう、違うサイズを数面お持ちになるのが便利です。

一般的には、漢字を書くにはやや大ぶりの硯、平仮名を書くにはやや小ぶりの硯を選ぶとよいです。

硯は墨をするのになくれはならない用具ですが、硯の良し悪しで、すった墨の墨色が良くも悪くもなりますので、やはり選び方には充分注意が必要です。

硯石はめったにない貴重なもので、その辺の石なら何でも良いというわけにはいきません。

墨をおろす硯は、あまり硬くてつるつるではいけませんし、石の粒子が粗く、すった際に墨と石質が混じってしまうようではよい硯とはいえません。

ほどよい硬さで、石質がするとけることなく、墨がほどよくおろせるものでなければなりません。

そのためには、石の中の鋒鋩というものが、ほどよく混じり合っていなければならないのです。

鋒鋩とは、石英や銅、鉄などの小さな結晶で、これが墨をする際におろし金のような役割を果たしています。

鋒鋩があまり粗く、たくさんありすぎると、墨が早くおりる代わりに、ドロリとしてしまいます。

反対に、鋒鋩が細かすぎると、いつまで磨っても墨がおりず、つややかな墨色が出ないこととなります。  

■生産地別



中国

端渓硯・澄泥硯・歙州硯・とう河緑石硯
松花江緑石e.t.c 朝鮮 渭原硯・鐘城硯・大同江硯・海州硯e.t.c



日本

赤間硯(山口県)・高島硯(滋賀県)・玄昌硯(宮城県)

雨畑硯(山梨県)蒼龍硯(高知県)・竜渓硯(長野県)

那智硯(三重県)・紅渓硯(宮城県)e.t.c

 ■硯の形


長方硯


最も一般的な硯の形です。

円硯


円形の硯です。

方硯


正方形の硯です。

板硯


海がない板状の硯です。

天然硯


石の自然の形を残した硯です。

太史硯


高さ10cmくらいの長方形で、裏面を左右残して削り取った硯です。

挿手硯

太史硯の厚みを薄くしたものです。

                  

■端渓石(たんけいせき)

産地

広東省高要県の南東斧果柯山の山麓

採石年代

古端渓-唐代・五代・宋代・元代・明代・清代

新端渓-それ以降

色

淡紫、青、黒、緑、白色など十数種類に分類されています

石紋: 青花-青黒色の花模様のような細かい斑紋

魚脳-透き通った白色で魚の脳のような柄

火捺-炎がゆらいでいるように見える柄

などなど

石眼

鳥の眼のような形をした柄で、石蓮虫の化石

石質

硬からず柔らかからず、均等な硬さです。

叩いたときに木声がよいとされています。

鋒鋩

大きさが適当で、均等に林立しています。

磨墨発墨     

優れています

■歙州石(きゅうじゅうせき)

産地

安徽省歙県竜尾山一帯

採石年代

唐代・五代・宋代・元代・明代・清代

宋以降は流通量が激減しています

色

青黒色・青色・黄色・緑色など

石質

比較的硬い

叩いたとき金声がするのが良いとされています

鋒鋩

優れています

磨墨発墨

良いです

■トウ河緑石(とうがりょくせき)

産地            

甘粛省臨?付近の?河(黄河)の1支流で、良材は川底から採石されたといわれています

採石年代

主として北宋中期

産地・年代とも不明で、現在残っているものも極めて少ないです

色           

緑色

石紋

さざ波のような風波紋があり、評価の高い硯

石質

粘板岩

鋒鋩       

極めて細かく、肌には光沢がある

磨墨発墨  

大変優れています

■松花江緑石(しょうかこうりょくせき)

産地         

吉林省扶余県の東方80キロ、松花江の流域にある砥石山。

採石年代    

清代に採石された比較的新しい石で、清の三代の後は採石されなかったようです

色             

緑色・緑黄色・黄褐色

石紋      

淡黄の曲線が美しい柄

石質      

粘板岩

非常に硬く、叩くとキンキン音がします

鋒鋩       

細く鋭い

磨墨発墨

素晴らしい

■紅糸石(こうしせき)

産地

山東省青州益都西の黒山

採石年代    

唐・宋代に採石されていたようですが、流通量は極めて少ないです

色

紅色・黄色

石紋

黄色の石には、紅糸のような紋が、紅色の石には黄糸のような紋があります

石質

頁岩(けつがん)

鋒鋩

やや細かく、澄泥硯に似ています

磨墨発墨  

良いです

■興化石

産地

福建省甫田県

色

紫色

■建州石

産地

福建省建甌県

色

紫色

■紫金石

産地

山東省青州

色

紫色

鋒鋩

細かい

磨墨発墨

良いです

■黎渓石

産地

江西省玉山県

岩質

歙州石の産地に近く、岩質もそれと同じです

■魯硯

産地

山東省

■五台山石

産地

山西省

端渓硯

歙州硯

石色 紫色を基調としている 緑を基調とした青黒色

材質

無垢に近い石

輝緑凝灰岩

やわらかめ

薄層状の石

千枚粘板岩

(粘土質が堆積して泥板岩が更に圧縮された石)

硬め

端渓硯の石紋はいろいろありますが、中でも最も有名なものに「眼」があります。
見た目は動物の眼のようで、墨味がかった紫青色の石質の中に全く違う色が入っています。
以下に少しまとめました。
くよく眼 くよくとは黒色の羽をもった小型の鳥類。この眼は小型で鋭く、黒の瞳を中心に、緑・黄・紫・紅などの円暈が幾重にも重なっている。
いんこ眼 いんこの眼より少し大きく、美しい眼。
緑豆眼 青豆のような緑色の眼、その中に小さな瞳がある
青眼 緑豆と大きさの違うもの。瞳はない。
鴉眼 黄色の眼でカラスの眼に似ている
鶏翁眼 雄鶏眼とも呼び、黄色の暈の中心に黒の瞳があるもの
猫眼 黄色の暈の中に縦に細長い瞳のあるもの
象眼 横に長い眼で、象の眼に似たもの
珊瑚鳥眼 青色の眼の中に珊瑚色の朱点があるもの
猪そう眼 猪のたて髪を抜いた毛穴の跡のような小さな眼が密集した状態
涙眼 涙が垂れたような形の緑眼
盲眼 眼中に白点のあるもの
死眼 暈が細くて中に黒点のあるもの
翳 はっきりした眼になっていないいびつな形の斑点
活眼 はっきりと見える眼

中国硯の歴史

前漢時代の硯は平板で磨石を伴っています。

というのも、墨が固形ではなく軟剤で、硯面上で磨石によって磨りつぶしていたことによるようです。

後漢時代には、墨堂や墨池のある硯が出始めました。

晋代から六朝時代になると、出土される硯は陶磁硯が多くなり、三足円台硯が主になってきます。

その他、方形四足石硯も出土していますが、墨堂は円形です。

六朝時代の出土した硯には、多獣脚円形磁硯がかなり多くなりました。

灰釉(かいゆう)・青緑釉のかかったものが多いです。

六朝末期あたりから北方系に箕形陶硯があり、隋・唐代にまで続きます。

これは少しづつ形を変えながら、斧形硯・風字硯などへと発展していきます。

唐代には出土硯には陶磁硯が多く、三彩釉多足式円台硯・箕形陶硯・亀形陶硯などがあります。

この頃には端渓硯や歙州硯も採掘されていたようです。

宋代では唐代で産出した端渓硯の採掘量も増えてきました。

この頃の出土したものも中に太史硯も見られるようになりました。

南唐時代に採掘され尽くした歙州硯は、この頃新たな良坑が見つかったことで採掘量が増えています。

黄河の上流ではとう河緑石が採掘されましたが、洪水によって硯坑が失われ産出が止まりました。

澄泥硯や陶硯の出土量も多いです。

元代の硯の発掘としては、石暖硯があります。

双硯になっており、硯底には窯形の空洞があり、その空洞で加熱した痕跡があります。

寒気が強く、温める必要があったようです。

明代では老坑が開かれました。

清代では老坑はさらに深く掘り進められ、東洞・西洞・大西洞・水帰洞などで水巌良材が多く出ました。

松花江緑石が採掘されたのもこの頃です。

和硯の歴史

日本では平安時代あたりまで、ほとんど陶硯が使われていたようです。

中国で硯文化が花開いたのに対し、日本では硯に対する関心が高まらず、室町時代の終わりごろになってようやく石の硯を作り始めましたが、実用の域を出ないものでした。

 

 

 

 

 

■古硯について

硯は作硯されてからどのくらいの年月が経っているかによって、新硯、古硯などと区別されていますが、その基準は人によって様々ですが、古硯と呼ぶには最低でも100年以上経っているものです。中国では清末以前です。

新古の中間的なものを旧硯と呼んでいる人もいるようです。

扱い方については、新硯同様です。

まず磨墨では硯は机に直に置かず、下に厚手の布やフェルト、厚いビニールなどを敷きます。

これは硯下部にすり傷をつけないようにするとともに、平面に置くとがたつく硯の安定を保つためです。硯の傍らには文鎮や水滴などが置いてありますので、それらが硯に触れて傷つかないよう充分に注意してください。

磨墨においては、力まかせに墨を磨らないことが大事です。墨を力任せに磨ることは硯を傷めることもさることながら、よい墨汁を得ることも難しいようです。

また墨を磨っているうちに墨の中の異物がガリッと音をたてて硯に傷をつけることがあります。

このときにも力任せに磨っていると、一瞬のうちに取り返しのつかない深い傷になってしまいます。

傷がついた場合には砥石などで墨堂を研いで取り除くことが可能です。退鋩、墨の膠などで目詰まりした場合の除去も砥石が有効です。

硯のメンテナンスで最も有効な手段は使用後なるべく早く水洗いすることです。

硯の片付けに関しては、乾かさずにおくと、カビの原因になりますので、必ず乾いてから片付けてください。